2019-02-20から1日間の記事一覧

雪を忘れた「岡崎」 S.45.10 国立劇場  <演劇界>劇評 山口廣一

「伊賀越道中双六」 鴈治郎、仁左衛門と顔をあわせたほか出演俳優全部が全部、大阪役者であることは、なんとしてもよかった。もちろん大阪役者だからいいといっているわけでない。上方狂言上演での上方役者の純性がまもられていることがいいのである。序幕の…

"江戸系の情緒"  四月の新歌舞伎座 S.47.4.12 毎日新聞 劇評 山口廣一

およそ俳優は演技力のほかにそれとの関連において個々の肉体がかもし出す情緒的な可能性をそれぞれに持っている。いわゆる役者の持味と称されるものがそれなのだが、今月の『江戸育お祭佐七』での勘弥の佐七などを見ていると、そうした持味のたのしさが、い…

「大和屋」が勝負  本興行の文楽座 S.37.2.4 毎日新聞 劇評 山口廣一

文楽で見る近松の原作もの、必ずしもおもしろくない。むしろ近松より後世の俗輩作家によって勝手気ままに改作されたもののほうが、かえっておもしろい実例のあるのは皮肉だ。 今月の文楽座では近松の「天網島」の全編をほとんど原作に近く上演した。しかしそ…